リレー小説『なんでも屋 山崎猛太』第二話

第二話 

『小さな客人』 

作 土佐兄弟・有輝



何でも屋という仕事は文字通り客に依頼されたことをなんでもこなす仕事である。

それがなんでも屋である。

客の多くは殺しの依頼や盗みの依頼スパイの依頼。

ほぼ完璧に猛太はこれらをこなしてきた自負がある。

猛太はイブと戯れながら先ほどの海美雪(あまみゆき)からの依頼をもう一度頭の中で考えていた。

海からの依頼は木に登る彼女に松ぼっくりを投げること。  

猛太が今までこなしてきた仕事のそれとは全くの新しい体験。

「イブ。俺ほんまになんでも屋なんかもしれんなぁ」

猛太は静かにイブの頭を撫でながらそう呟いた。

猛太は本当になんでもする事でお金を稼ぐ自身の仕事の幅の広さを海との出会いで再認識していたのであった。

コンコン…

「なんでも屋っていうのは、ここ?」

甲高い声。

新しい依頼者がやってきたようだ。

「はい。いらっしゃいませー!!」

ドアが開いているがそこには誰もいない。

「ん?誰もおらんやん」

周りを見渡しても客の気配すら無い。

「ここだよ」

猛太は声のする自分の足元を見るとそこにはおかっぱ頭の小さな男の子が佇んでいた。

「わ!びっくりした!」

猛太は思わず声をあげた。

「入るね!」

驚く猛太をよそに部屋の中へ進むおかっぱ子ども。

おかっぱ子どもは椅子に一生懸命よじ登り腰掛けた。

「はじめまして!おじさん!僕の名前はマサハル!」

突然のことに驚きつつ猛太が尋ねる。

「マサハルくん?君幾つ?」

「いくつに見えるー?」

不敵な笑みを浮かべる男の子。

「コンパやないねんから…」

「コン、パ…?」

「いやなんでもないなんでもない!んー5歳くらいか?」

「7歳!小学1年生!」

マサハルはハキハキとそう答えた。

「そうかぁ。マサハル君お母さんかお父さんは一緒に来てへんの?」

マサハルの目線に合わせて腰を落としてそう聞く猛太。

するとマサハルはどこか寂しそうに首を振った。

子供の来客ははじめてであり驚きと戸惑いを隠せない猛太。

「ちなみにどうしておじさんのところに来たんや?」

「僕と遊んでよ」

マサハルは小さな声でそう答えた。

「お金ならあるから」

そう言うとマサハルは背負っていたリュックサックの中から沢山の札束を出してみせた。

「2000万。これで遊んでよ!おじさん!」

猛太は面を喰らって動けなくなっている。

「じゃあかくれんぼしよ!」

固まる猛太を無視して数を数え始めるマサハル。

「ちょっちょっと、あのこの金どーしたん?」

猛太は焦りながらマサハルに聞く。

「お年玉。別に僕のお金なんだから何に使おうが勝手でしょ?」

そう言うとマサハルは顔を伏せ数字を数え出した。

「もーいーかい?」

「ちょっと…待って、どういうことや?」

猛太はこのおかっぱ子供は何者なんだと考えを巡らせる。

するとマサハルは

「なんでも屋でしょ?なんでもするんでしょ?どんな客でもどんな内容でも依頼されたらやるんでしょ?ねぇ!早く隠れてよ。」

「そうやけど…」

そんな猛太を囃し立てるかのようにマサハルの唱える数字の速度が上がっていく。

猛太は仕方なくカーテンの隙間に身を隠した。

「もーいーかいー」

猛太は未だ戸惑いながら

「もーいーよー」

と返した。

マサハルは笑顔を浮かべながら部屋中をくまなく探しだす。

先ほどの子供とは思えない行動や言動とは裏腹に隠れた猛太を探す7歳の純粋な男の子の姿であった。

「みーっけ!!!」

猛太はあっさり見つかってしまう。

「もうおじさん隠れるの下手!」

少し呆れた様子のマサハル。

その場で立ち尽くす猛太。

そんな猛太とは反対に満足げにマサハルは

「おじさんありがとう!じゃあね!」

そんなマサハルに

「待て待て待て!これは貰われへん!!というか君はなにもんやねん!」

つい大声をあげる猛太。

「ただの子供だよ。ただの。」

そう返すマサハル。

「ただの子供が2000万も持っててかくれんぼだけして帰るなんてあり得へんやん!」

猛太が言う。

2人の間に不穏な空気が流れる。

「君誰やねん。何者やねん。」

するとマサハルがゆっくりとした口調でこう呟いた。

「僕の名前は損。損マサハル」

「損?」

猛太はその苗字を聞いてすぐにピンと来た。

そう。このおかっぱ子供はあの超一流企業社長の息子。

ロストダンクの損社長の息子であること。

マサハルは笑顔を浮かべながら

「お父さんはすごい人なんだ。ロストダンクの社長なんだ。でもかくれんぼの最中にいなくなっちゃったの。だから僕はかくれんぼを最後までやったことがないんだ!お父さんとできなかったかくれんぼをやってみたかったんだ」

マサハルは父とやったかくれんぼの答えを探しにこのなんでも屋へ来たようだった。

俯いているマサハルの肩に様々な感情を押し殺し優しく手を置き、

猛太はすべてを分かったかのように

「君の勝ちや」

「ほんでこの2000万は受け取られへん」

マサハルは猛太の方を向き

「でも…」

猛太は2000万円をリュックに詰めてマサハルに背負わせた。

「マサハル君。かくれんぼどやった?」

するとマサハルは笑顔で

「まぁまぁかな」

と呟いた。

2人は見つめ合い、微笑みあってマサハルはなんでも屋を後にした。

猛太が振り返るとイブが白い犬のぬいぐるみと戯れあっていた。

「お父さんか…」

ボソリと猛太はその言葉を口にした。

猛太の心の中には今までに感じたことのない不思議な気持ちが渦巻いていた。

父という存在。

自分も、父親だったとしてもおかしくない年齢。

マサハルとの出会いで少しずつ猛太という冷徹な人間を変えていく様が自分でもわかった。

コンコン

またノックの音が響く。

「はい!いらっしゃいませー!」

次の依頼人が来たようだ。

モータースLIVE

200組以上がしのぎを削る若手お笑いライブです! 上からレフカダ→ドーン→ミネルヴァ(C,D)とランク分けしております。

0コメント

  • 1000 / 1000