第六話
『翼を授かるご機嫌フライト』後編
男スペシャル 溝杉陸
「いやー、最悪な空の旅やったわ」
猛太は指定の野球場に着き、松尾と合流した。
「先輩おもろすぎますって!」
「何もおもろい事ないわ!ほんで本題やけど、野球の依頼とは言いつつ、ただ普通に野球するだけやないやろ?」
猛太はわざわざ日本からロングアイランド島まで来てるだけに、他に意図があると疑う。
「いえ!久々に野球したいだけですよ!」
「え、ホンマにそれだけ?」
「だからそうですって!」
「お前ええ加減にせえよ!」
そう叱りつつ、そう言えば松尾は昔からこんな奴だったと懐かしく思う猛太の顔は少し嬉しそうだった。
そして松尾が用意した味方チームのメンバー、敵チームのメンバーが顔を合わせる。
「待って、あの子どうしたん?パンツ一丁やないか」
全員ユニフォーム姿の中にポツンと1人だけ露出度の高い奴がいる。
「あーあの子、マツバーラって言うんですけど、ここに来る途中に電車で寝てたら置き引きにあって、パンツ以外全部取られたらしいです」
「難儀な奴やなあ」
野球の試合は始まり、順調に進んで9回裏。ここを守り切れば松尾と猛太チームの勝利。
「先輩頑張れー!」
松尾の声援を受けるピッチャー猛太。
「バッチコーイ!」
その掛け声と同時に猛太はストレートを投げる。
カキン
球は打たれたが、高く飛んだ打球は松尾が見事キャッチ。
アウト!ゲームセット!アーーーーーーー!
「先輩お疲れ様!」
松尾はそう言うと、スポーツドリンクのような物を猛太に渡す。
「ありがとう!ゴクゴク、、、ウマい!何やこれ?」
あまりの美味しさに猛太は感動する。
「青春の味、バイアグラ!」
「バイアグラかぁぁぇえい!うおぉい!!!!」
猛太は再び両手を翼の様に広げ、後方に吹っ飛びバックスクリーンに打ち付けられる。
「お前ええ加減にせえよ!」
猛太の顔は疲れが見えたが、下半身はご機嫌だった。
「元気そうで良かったです!今度は僕が日本に遊びに行きますね!」
松尾はそう言うと、報酬と飛行機代を渡し、去っていった。
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「はあ、散々な1日やで」
空港近くのホテルで1泊する猛太は、地元の英語ばかりのTV番組をつけながら着替えていた。
トゥットゥットゥールトゥ♪
音に合わせて髪をセットするCMが流れる。
「ヘアワックスのCMか。オシャレやな」
「アォ!バイアグラ!」
「バイアグラァァア!!オラァァァア!!!!」
猛太はその言葉に反応する体になっており、そこから意識は無くなった。
次の日の地元の新聞には、両手を広げながら後ろ走りでロングアイランド島を一周する日本人が現れたとニュースになっていた。
猛太は気が付くと何でも屋の事務所に着いていた。
「あれ?どうやって帰って来たんやろ?まあええか」
細かい事は気にせず、何でも屋は今日も営業中。
続く
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