第十一話
「残酷な真実」中編
男スペシャル溝杉陸
「おいお前、どういう体の作りか知らんけど、上から物言うのやめろ!」
「下から言ってんだろコラ!ただの人間のくせに生意気な!」
「なんやお前、見下すなよ」
「見上げてんだろ!」
ジャワ〜ン♪
「そこまでにしてもらおうか」
ウクレレの音と同時に戦車のハッチが開き、中からチリチリ頭の男が出てきた。
「うちの戦車が申し訳ない。しかし石を投げて来たのは貴方達だ。音圧で潰してやっても良いが今は急いでいる。立ち去れ」
「あんた何者や?この戦車男もなんやねん!」
敵かも知れない男に猛太はピリつく。
「先輩はフルスイング帝国の王だぞー!強いんだぞー!」
「あ!松尾!勝手に素性バラすなよ!」
松尾の発言と猛太のマントと仮面を見て、チリ毛男は慌てる。
「もしや、あなたが山崎猛太さん?いや、我が王!」
「は?」
「あいにく立ち話をしている余裕がないので、移動しながら話しましょう!中へ入って下さい!」
戦車の中に入る一同は、中の光景に驚いた。
そこは想像していた物と違い、人間の体内の様な肉感のある物だった。
「これはなんですか?」
真中田は赤い塊を握って質問する。
「痛い痛い!そこは肝臓だ!触るな!」
外から戦車男が叫ぶ。
「あまり触らないでやってくれ。さあ、こちらの部屋にどうぞ」
チリ毛男が案内すると、広い空間に着いた。
「改めまして、おはパーマ!私はレッド軍曹の側近のパーマネント大佐だ。
そしてこの戦車は車太郎。よろしく」
「レッド軍曹の側近やったんやな。色々聞きたい事があるけど、まずこの車太郎ってなんなん?」
「彼は元々フルスイング帝国で働く車椅子の男でした。
今は戦車の能力を得て私と行動してます」
「能力?話が飛んでるなー。ようわからんわ」
「まだ王位に着いたばかりで、わからない事だらけだと思うので私が説明しましょう。
私はレッド軍曹の命令で、損マサハル陣営に潜入していました。
そこには数々の獣人達が働いていました。
しかしある日、森の中で熊さんに出会い、花咲く森の道を命からがら逃げている途中です」
「え?後半よくわからへん!どういうこと?」
「ですから、マサハルの配下の熊に見つかり、迎撃にあい、今も逃げているんです!」
「え、追われてんの?ヤバない?損マサハルは何をしようとして、、、」
バコーン!!
突如、車太郎に何かがぶつかった。
「まいどまいど!バチバチいったろかーい!」
「オラオラお嬢さん!早くお逃げなさいよ!もう追いついちまったじゃねーか!」
外から高い声と低い声の2つの男の声が聞こえる。
「まずい!追いついてしまった!
ここは私が応戦します!あなた達は菊池組長の元へ逃げて!
そこで全てを知るのです!場所は車太郎が案内してくれます!」
そう言ってハッチから出たパーマネント大佐は、赤い熊の体を持つ男と、黄色いミーアキャットの体を持つ男と乱闘を始める。
「大佐すまねぇ!俺はこいつらを送り届けるぜ!死ぬなよ!」
そう言い車太郎は全速力で菊池組長の元へ走る。
「うわぁぁぁぁあああ」
背後から大佐の叫び声が聞こえた気がしたが、振り返る余裕はなく、一同は先を急ぐ。
続く
0コメント