第二話
『小さな客人』前編
土佐兄弟 有輝
何でも屋という仕事は文字通り客に依頼されたことをなんでもこなす仕事である。
それがなんでも屋である。
客の多くは殺しの依頼や盗みの依頼スパイの依頼。
ほぼ完璧に猛太はこれらをこなしてきた自負がある。
猛太はイブと戯れながら
先ほどの海美雪(あまみゆき)からの依頼をもう一度頭の中で考えていた。
海からの依頼は木に登る彼女に松ぼっくりを投げること。
猛太が今までこなしてきた仕事のそれとは全くの新しい体験。
「イブ。俺ほんまになんでも屋なんかもしれんなぁ」
猛太はそっとイブの頭を撫でながらそう呟いた。
猛太は本当になんでもする事でお金を稼ぐ自身の仕事の幅の広さを
海との出会いで再認識していたのであった。
コンコン…
「なんでも屋っていうのは、ここ?」
甲高い声。
新しい依頼者がやってきたようだ。
「はい。いらっしゃいませー!!」
ドアが開いているがそこには誰もいない。
「ん?誰もおらんやん」
周りを見渡しても客の気配すら無い。
「ここだよ」
猛太は声のする自分の足元を見るとそこにはおかっぱ頭の小さな男の子が佇んでいた。
「わ!びっくりした!」
猛太は思わず声をあげた。
「入るね!」
驚く猛太をよそに部屋の中へ進むおかっぱ子ども。
おかっぱ子どもは椅子に一生懸命よじ登り腰掛けた。
「はじめまして!おじさん!
僕の名前はマサハル!」
突然のことに驚きつつ猛太が尋ねる。
「マサハルくん?君幾つ?」
「いくつに見えるー?」
不敵な笑みを浮かべる男の子。
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