『なんでも屋山崎猛太』2-3

第二話 

『小さな客人』後編 

土佐兄弟 有輝



するとマサハルがゆっくりとした口調でこう呟いた。


「僕の名前は損。損マサハル」


「損?」


猛太はその苗字を聞いてすぐにピンと来た。


そう。

このおかっぱ子供はあの超一流企業社長の息子。


ロストダンクの損社長の息子であること。


マサハルは笑顔を浮かべながら


「お父さんはすごい人なんだ。

ロストダンクの社長なんだ。

でもかくれんぼの最中にいなくなっちゃったの。

だから僕はかくれんぼを最後までやったことがないんだ!

お父さんとできなかったかくれんぼをやってみたかったんだ」


マサハルは父とやったかくれんぼの答えを探しにこのなんでも屋へ来たようだった。


俯いているマサハルの肩に様々な感情を押し殺し優しく手を置き、

猛太はすべてを分かったかのように


「君の勝ちや。

ほんでこの2000万は受け取られへん」


マサハルは猛太の方を向き


「でも…」


猛太は2000万円をリュックに詰めてマサハルに背負わせた。


「マサハル君。かくれんぼどやった?」


するとマサハルは笑顔で


「まぁまぁかな」


と嘯いた。


2人は見つめ合い、微笑みあってマサハルはなんでも屋を後にした。


猛太が振り返るとイブが白い犬のぬいぐるみと戯れあっていた。


「お父さんか…」


ボソリと猛太はその言葉を口にした。


猛太の心の中には今までに感じたことのない不思議な気持ちが渦巻いていた。


父という存在。


自分も、父親だったとしてもおかしくない年齢。


マサハルとの出会いで少しずつ猛太という冷徹な人間を変えていく様が自分でもわかった。


コンコン


またノックの音が響く。


「はい!いらっしゃいませー!」


次の依頼人が来たようだ。



続く

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