第四話
『寒風の吹きすさぶ荒野』後編
山本マリア
結果、依頼主トミーが探していた人物は後日、あっさり見つかった。
なんとその者からトミーのもとに直接連絡があったのだという。
そのあっけない結末もさることながら、猛太は何でも屋という仕事に対し疑念を抱き始めていた。
「俺のやりたかったことってなんやったんや…?木に登った女優に松ぼっくり投げたりガキと隠れんぼすることやったんか…?」
人の夢や願いを叶えてやるのが何でも屋ならば、自らの野望が達成される未来はない。
かつては巨万の富を得たいという野心のもと歌舞伎町という巨大な魔物に戦いを挑んだ。
そして生存した果てに血塗られた札束を多く掌握するに至った。
しかし猛太には決定的な何かが欠けていた。
歌舞伎町の裏通りですべてを終えて良いのであろうか。
己を照らす光はネオンの明かりだったのか。
己が通る道はこんな細い路地だったのか。
最初はほんの僅かな心のヒビであった。
それがいつしか猛太の現状を破壊せんとする衝動として全身を駆け巡った。
「野望とは奔馬のようなもんや…荒野を突っ走る奔馬や…誰も…
そして何を持ってしても取り押さえることは出来へんのや…」
猛太は自らに潜む逞しい馬が徐々に躍動し始めるのを感じ取っていた。
「夢を捨て、野望を捨て、男は生きられるんかっ!!俺はやるで!!
世界を揺るがすようなことを!!!!」
そう叫び、事務所の椅子から立ち上がった瞬間、猛太はふと我に返った。
「………あかんあかんあかん!!!精神が毒々しくなっとる!一旦冷静にならな…」
そういうと猛太は事務所を出て、近所のピンサロに直行した。
続く
0コメント