最終話
『なんでも屋山崎猛太』後編
青色1号仮屋
「え?」
山戸は固まる。
カナやんはまた笑顔になり話出した。
「ごめんね。ガッツマンたちはわたしの理想とする歌舞伎町にはいらないわ。
だからね。消すの!ていうか消したのよ!」
「消した!?ってどういうことやねん!山戸はまだおるで!」
「あなたたちが損マサハルを倒したあと。
車太郎や、パーマネント大佐、藤原その他諸々のガッツマンはもういないわ。
なぜか山戸だけあなたの潜在意識に残ったみたいね!これは友情的なやつカナ?」
「カナ?ちゃうねん!なんてこっちゃ!あいつらは体は変でも心は人間!
俺たちの仲間やったんやで!しかもパーマネント大佐にいたってはガッツマンちゃうし!」
「そうだったの!?まぁでもパーマネント大佐はレッド軍曹の側近だし、なんかドヤ顔で楽器とか吹いたり人の歌勝手にアレンジしたりしたから仕方ないわ!」
山戸が震えながら口を開く。
「そんな。僕はもういないってこと?」
「そうよ!山戸あんたはもうこの世にはいないの!あんたの意識だけが猛太の中にいるだけ!残念ね!わたしも少し悲しいわ」
山戸は汗だくになりながら声あげた。
「いるよー!!!ここにいるよーーー!!!」
山戸は必死に自分の存在を自分自身で確認している。
「カナやんもうあかん!
あんたは情報屋として助けてくれた俺の知ってるかなやんとちゃう!
なにが神や!なにがカミやんや!あんた勘違いしとる!あんたはただの煮篠カナが大好きなおっさんや!!憧れるのは煮篠カナだけにしとき!!
まぁ今のあんたは煮篠カナにも程遠いただのおっさんやけどな!」
カナやんの笑顔が完全に消えた。
「よう猛太よ。お前のことはわしは買っていた。
歌舞伎町に探偵。必死にみんなの依頼に答える姿は歌舞伎町に必要だと思った。
覚えておるか、わしに届けてくれた桜餅。
あれは美味かった。またあの歌舞伎町が戻ればあの桜餅を食べれるんや。
またあの頃の歌舞伎町に戻ろうじゃないか」
カナやんの口調は菊池組組長、菊池情二になっていた。
それでも猛太は反対する。
「ダメや!もう元の歌舞伎町には戻られへんねん!
ここからまたやり直していくしかないねん!」
「そうか、わかった」
ボソリと菊池が呟くと猛太の目の前が真っ暗になり、気がつくと猛太はフルスイング帝国の城の中にいた。
「なんやったんや今のは、でもここはわかるぞ、帝国の城内や、てことは現実の世界や!戻ってきたんや!
それにしてもぎょうさんカプセルが、全部中に人が入ってもうてる!」
周りに無数のカプセルがきれいに並んでいる。
そして猛太は発見した。
「こっ、これは真中田と松尾や!あの映像は本物やったんやな!
くそーカナやんめ!どこ行ったんや!」
(プシューー!)
一つカプセルが開くと中からハンチングをかぶった小太りのおじさんが出てきた。
「おーい猛太!元気にしてたか!?」
おじさんは笑顔で話しかけてきた。
「竜さん!竜さんや!」
「そうだ!お前の好きなテキーラ飲むか?」
「なんやて?俺はいつも麦のソーダ割にカットレモンやったやろ!覚えてへんのか?」
(プシュー!)
またひとつカプセルが開く。
「猛ちゃんごめんね」
カプセルから無理やり大男が出てきた。
「お前は大津留!!相変わらずデカいな!」
「猛ちゃんごめんね、猛ちゃんごめんね、猛ちゃんごめんね。」
「お前それしか言えへんのかい!」
(プシュー!)(プシュー!)(プシュー!)
次々とカプセルが開いていく。
「ようこそホストミネルヴァへ!」
「先輩!!一緒に、ロングアイランド島にいってサッカーしましょう!」
「ボンジュール!ミーのフランスパンはどこでんぬ!?」
「薩摩 川、松尾、真中田、でもみんなオリジナルと少し違うやんけ!!
しかもおでこにはっきりと、製造番号みたいな数字が書いてある!」
「どう!これが神バイアグラの力よ!」
振り向くとカナやんが満面の笑みで立っていた。
「全然あかんやんけ!やっぱり無理やねん!これ!!」
「そんなことないわよ!これからもっともっとたくさん作っていけば完成に近づくのよ!
とりあえず今できた人たちはボツ!作り直しよ!」
「作り直してこいつらはどうなんねん!」
「仕方ないわ後で片付けとく!
まだおでこの製造ナンバーが二桁にもいってないし、この製造ナンバーが三桁いや四桁になるころにはすっかり元の歌舞伎町になってるわ安心して!」
「それまで作ったやつはポイなんか!?
そんなの勝手すぎる!こいつらコピーやけど人間やねん!
やっぱりあかん!こんなものぶっ壊す!!」
猛太は近くにあったカプセルを思い切り蹴った。
「無駄よ!カプセルを壊したところでこの神バイアグラがなくならない限りコピー人間の製造は続くわ!」
カナやんは胸元から錠剤を取り出す。
「くそー!その薬!よこさんかい!!」
猛太はカナやんに掴みかかった。
取っ組み合いになる2人のおっさん。
「やめなさいよ!あんたは元の歌舞伎町で探偵をまたやるのよ!」
「そんなことでけへんわ!お前おっさんの割に力強すぎんねん!」
「あんたもかなりおっさんでしょうが!」
「何をーー!!!」
猛太がカナやんの長い髪を鷲掴みにすると髪はスルッと取れ中からスキンヘッドが露わになった。
「キャーー!!わたしの髪の毛返して!」
「そやった!これはカツラやった!!」
その時、猛太の目に映ったのはツルツルと光沢の入ったスキンヘッドに書かれた三桁の数字だった。
「まさか、カナやんあんた。。」
「見られちゃったわね。
そうよわたしはコピー人間、とっくの昔にオリジナルは死んでしまっているわ。
その時に、レッド軍曹がちょうどロストバンク社で開発されたばかりの神バイアグラを私に試したのよ。
そして、実験は続いたの。わたしのコピー人間は大量につくられては捨てられて来たわ!」
「まさか、でもレッド軍曹がいなくなってからはどうしてたんや??」
「ある程度のコピー人間になれば自分で自分を作ることもできるのよ。
だから私は少しでもオリジナルに近づきたいの!そのためにもオリジナルが、生きていた頃の歌舞伎町を復活させたいのよーー!!!」
あまりの迫力に猛太は言葉を発することができなかった。
「ヴッ!頭が痛い!!」
カナやんが倒れ込む。
「大丈夫か!カナやん!」
すぐに、猛太はカナやんを抱き抱えた。
「やっぱりまだダメねぇ。これだけやってもすぐにガタが来ちゃうの。これだけ動けばすぐに壊れるわぁ」
カナやんの体が、少しづつ消えていく。
「カナやん!うそやろ!どうすればいいんや!」
「もう治す方法はないわ。
わたしのデータは私しか知らないし、次の私のコピー人間はまだ製造してないから残念 、もうわたしはおわり。
あーあ、オリジナルが食べた桜餅1度は食べたかったわぁ」
「待ってくれ!カナやん!また薬飲んだらええやん!
カナやんは特別やって!もっといろいろな情報教えてくれ!!
またいつか煮篠カナのライブ行こうや!!なぁカナやん!!」
猛太からこぼれる涙は消えていくカナやんを通り猛太の足を濡らす。
「もう、さっきと言ってることが違うじゃない。
わたし無しで生きていくのよ。神バイアグラはあなたに任せるわ。
データも、この城の地下に隠してある。好きにしなさい。
あなたはすごくツッコミ力もあるし、大喜利だって強いし、お笑い力がすごいから、最初からこれだけ優秀なのね。
羨ましいわ」
「なにいってんねん!お笑いなんて無くてもええんや!
みんなが、いてくれたらそれでええんや!」
「そんなあなたが、わたしは好きだったわ。最後にこう呼ばせて、ダーリン。。」
そう言うとカナやんは消えていった。
猛太の体は自らの涙でびしょびしょになっていた。
「めっちゃ濡れとるやないかい!!!」
気がつくと、周りにいたコピー人間も消えていた。
「みんな消えてもうた。俺1人になってもうたな」
するとどこからともなく声が聞こえてきた。
「いるよーー!おれここにいるよーー!!」
「その声は山戸!!どこや!!」
「ここだよ!猛太さん!あなたのなか!!」
「何やて!?あの時の話は現実やったんか!」
「そう!これからはあなたの心の中で生きていくよ!!よろしく!!」
「なんやうるさいなぁ!!まぁ仲間がいることはいいことか!よし!2人で頑張ろう!」
「でもこれからどうすんの?」
「そうやなぁ。とりあえず神バイアグラと鬼バイアグラをどうにかせんとなぁ!」
「とか言って使わない!?」
「アホか!使わんでもいいような国にしていくんや!!
それがカナやんからの最後の依頼や!俺はそう捉えた!
だから何でも屋としてこのフルスイング帝国の王になったんや!」
「絶対に使わないでよ!本当に絶対使わないでよ!!」
「振りみたいに言うな!使わへん!とりあえず、大喜利しようや!!お題だしてくれ!!」
そう言って猛太は城の地下室に向かうのであった。
ここは元歌舞伎町、現フルスイング帝国、ここに一人の王がいた。
その名も山崎猛太。
城の入り口には、ボロボロの木でできた何でも屋の看板。
今日も、依頼主が後を絶たない。
「ここがあの何でも屋ですか?
本当にあなたが、王様の山崎猛太様?
どれどれ?確かに本物だ!噂通り!
ちゃーんとおでこに数字が書いてあるんですね!」
完
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