第十二話
「いざドーンへ」後編
土佐有輝
松尾はすかさず食べた。
気付いたら3人はジャングルの真ん中で完全に孤立してしまったのだった。
ザワザワザワと木々たちがまるで迷い込んだ3人を不気味に歓迎しているかのようだった。
3人はゆっくりとドーンがあるであろう方へ向かって歩き始めた。
早、歩き始めてもう2時間は経つ。
しかしドーンへたどり着く気配もない。
「まったくこんな状況になっても君って君って泣いたりしないんだね??」
真中田のカナが最早慣れてきた頃でもあった。
「どーーーーもーーー!!!!!!」
地響きに似た音が突如3人を襲う。
「なんや?何事や?誰や?」
猛太が、周りを見渡す。
「お前らをこれ以上先には進ませない!!!!」
暗闇から大きな声が聞こえる。
「これでもくらえ!!!!」
猛太はその声のする方へ視線を向けたその時猛太の脇腹に何か鋭いものが刺さった。
「うぁ。なんでさっきから俺だけちょろちょろ怪我すんねん。いたた」
暗闇からゆっくりと姿を現したものの姿を見て3人は驚愕した。
なぜなら動物の馬のような下半身に人間の上半身が2股に生えている。
ケンタウロスのようだが人間の体が2人付いている。
「俺たちはーーー!!!ハエノとヒヤモトで悶牢ズでーーーーす!!!名前だけでも!!!!!!
覚えて帰ってください!!!!!!!!」
「いま世界中のひまわりがこっち向いたわ〜」
大声の顔濃いヒヤモト、冷静な銀髪ハエノ。
対照的な2人ではあるが下半身は馬になっていて1つになっている。
猛太は後退りをし脇腹を押さえながら
「なんやねんこいつら。気色悪い」
「あなたたちはーーーーーー!!!!この先にーーーーー進もうとしているのか????そんな奴を1人残らず排除する!!!!!!」
ヒヤモトの声はすこぶるうるさい。
「損マサハル様に言われてんねん〜」
ハエノは眠そうだ。
「損マサハル?」
松尾が思わず聞き返す。
「ちょっとーーー!こいつらのトリセツないの?気持ち悪すぎてベストフレンドではないってことはたしか!」
真中田も額の、いや顎の汗を拭う。
不穏な空気が立ち込める。
相手はどう考えてもまともではない獣人であることは目に見て取れる。
猛太の頭の中に様々な妄想が膨らむ
「大喜利で勝負か?いやあのハエノの雰囲気、大喜利では勝てへん。
ギャグか?こっちの2人は使い物にならん。
しかもあのヒヤモトは声でなんとでも笑いとるタイプや。
モノマネ?モノマネやったら…いやなんかわからんけど大怪我しそうや」
猛太は意を決したように松尾、真中田の2人に力強く言い放った!
「一旦逃げるで!!!!」
3人は横道に逸れ全速力で走り去った!
「させるかーーー!!!!!!!!!!」
「逃さないよ〜」
悶牢ズも、すかさず追ってくる。
悶牢ズは下半身が馬なだけあってものすごい脚力で追いかけてくる。
3人はすべての力を振り絞って振り切ろうと必死にジャングルを走る。
「わぁ!!!!」
松尾が木の幹に足を取られその場に蹲ってしまった。
「松尾!」
猛太も、振り返るがその後ろに悶牢ズが迫っている。
絶体絶命。
松尾は目を閉じてロングアイランド島で過ごした思い出を回想していた。
もうだめか。
その時
「わんわんわんわん!!俺たちにここは任せろ!!」
松尾と悶牢ズの間に何者かが立ち塞がった。
猛太
「アダムとイブやんか!!!!!!!!」
そうなんでも屋山崎猛太の愛犬で、バイアグラを飲んだことにより人間になった山戸ヒデユキとどっぷり藤原である!
山戸
「俺たちのご主人様に手出すヤツは1人残らずガッツガッツガッツ!」
藤原
「大声だったら俺たちも負けねー!!!」
悶牢ズは先ほどの威勢とは裏腹に特にヒヤモトの顔色が一気に青ざめていく。
「あ、この人たちとは戦いたくない…ハエノすまん!」
「いやなにしてんねん〜ヒヤモト〜?」
悶牢ズヒヤモトは真の情熱系に弱いのであった。
上半身同士で統制の取れなくなった悶牢ズはもはやただのキモ生物と化していた。
悶牢ズは上半身がさけるチーズのようにさけていき暗闇にその姿を消したのであった。
突然の出来事に驚きを隠せない猛太であったが猛太の目には涙が溜まっていた。
ずっと言えなかった思い。
ずっとそばにいた愛するものが突然姿を消した思い。
そしてまた会えたこの再会に、猛太は大粒の涙を流した。
「ここからドーンはもうすぐです。俺たちも一緒に向かいます!」
山戸と藤原は力強い目でかつての愛する主人に忠誠を改めて誓った。
真中田
「会いたくて会いたくて震えてたからよかったじゃん!?」
松尾
「ロングアイランド島の思い出そんななかったなぁ」
役者は揃った。
いざ損マサハルの城は目の前だ。
続く
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