第十三話
「命」中編
菅野ナオト
「そやな! お前達なら大丈夫やな! 分かった! 任せたで!」
猛太と松尾と真中田は山戸とどっぷり藤原にその場を任せ走り出す。
「待ちなさいよ! あんた達は僕のキッスで夢中にさせるんだから行かせないよ!」
山口が猛太達を追おうとするところをすかさずどっぷり藤原のタックルが入る。
「ほら俺達がいるよ! 13期最強のガッツマンを決めようぜ!」
山戸が自分の手柄のようにイキる。
「フリィーモンキィィィー」
戦いの火蓋が切られた。
(あいつら、絶対に勝ってくれよ)
心配そうな猛太を横に真中田が一言も喋らないことに松尾が疑問の顔を浮かべる。
「なんだか、元気がないけど大丈夫?」
真中田は無意味にアゴを尖らせながら答える。
「なんだか、ミーの胸がずっとそわそわするんだよ 」
らしくなく、カナやん節もアメリカ節もなく答える真中田。
猛太はすでに真中田のノリにうんざりしていたので、気にすることなく走り続ける。
それぞれ不安を抱えながら一軒家に到着する一行。
「さぁて! 全部を終わらせるでーーー!」
猛太は決意を胸に息巻く。
一軒家の扉を勢い良く開けると、そこはなんの変哲もないリビングに1人少年がソファーに腰を掛けて猛太達に言葉をかける。
「いらっしゃい」
損マサハルだ。
「マサハル!! 」
勢い良く猛太はマサハルを名前を呼び近付こうとするが、マサハルは焦る様子もなく猛太を制止する。
「猛太さん 落ち着いて」
子供の落ち着いた制止に、一度高ぶった感情を抑え、冷静に会話をするスイッチに切り替える。
「マサハル君 一体なんでこんなことになってん」
猛太は優しくマサハルに問いかける。
「猛太さん 僕がなんでこんなことをしたかって?
簡単だよ 僕はお父さんに愛されたかったんだ」
マサハルは寂しそうな声で話を続ける。
「僕は生まれて物心ついてから、ずっと一人ぼっちだった。
お父さんは僕に全く構ってくれない。
お母さんはいないみたいだったし、ずっと寂しかったんだ。
いくらお金を持たされても心が満たされない。
どうしたら、お父さんが僕に振り向いてくれるか調べるために、会社の情報機関を買収したんだ。
そしたら、お父さんはずっと猛太さん あなたの事しか頭に無いことがわかったんだ。
僕は猛太さんに嫉妬した。
だからあの日探偵事務所に行ってあなたを消そうとしたんだ 」
続く
0コメント