第十三話
「命」後編
菅野ナオト
マサハルの言葉に顔を曇らす猛太。
「だからあの日突然現れたんやな」
「そうだよ でも僕はあなたを消すことができなかった 消す前にあなたがどんな人間なのか、
知るために少し遊んでみることにしたんだ。
そしたらあなたはまるで僕の実の父親の用に接してくれた。
僕はそれが嬉しかった。
でも信じるのが怖かったんだ。
父のような興味を無くしていくんじゃないかってね」
マサハルは語りながらポケットに手を入れる。
「お前の事情は分かった でもなんで!なんで人間を信じることから逃げて、動物を愛したんや!」
猛太は火サスの船越英一郎のようにマサハルを追い埋める。
松尾は話ができてない。
真中田はアゴを尖らしていた。
「猛太さんに会いに行った時に飼っていた犬に僕は心を引かれたんだ。
家はお父さんの意向で動物と触れ合うことが出来なかったからね。
動物は絶対に裏切らないって その時気付いたんだ。
もう人間はいらないってね。
だから鬼バイアグラの開発を始めて人間を滅ぼそうとしたんだ」
猛太はマサハルの元に近付きマサハルの頬に張り手を喰らわした。
「あかん!!! マサハル! お前はただ嫌な事と向き合わん弱虫や! あかん!!」
ティッシュくらい薄いことを言って満足そうにする猛太。
しかし、マサハルは笑いながらポケットから何かを取り出す。
「なんや それは!?」
怯える猛太にマサハルは悠々と説明を始める。
「これは特殊な装置のスイッチでね。
このスイッチを押すと人間だけを消す放射線が放出する。
僕を含めて人間を消すんだ 。
いらないからね」
マサハルはタメもなくスイッチを押した。
「いや! スイッチ押させないタメもなく押すんかい!!!」
猛太はツッコミを入れながら目を瞑って伏せる。
モスキート音のような高い機械音と眩い閃光が走る。
猛太が目を開けると 猛太の目の前には体を大の字にして身を呈して猛太と真中田を守る松尾の姿が。
「松尾ぉーーーー 」
倒れる松尾を受け止める猛太。
「何を! 何してんねん! 」
松尾は少しずつ消え行く体を見ながら、猛太の目を見た。
「猛太さん オレね・・・」
何か喋ろうとした瞬間、高速で体が消え遺言を残せず、松尾の体は消えていった。
「いや最後の言葉を言えへんのかい!!!!」
猛太は泣きながら最大のツッコミを入れた所に差し込むようにマサハルの笑い声が鳴り響く。
「やった! 実験は成功!この世から人間がいなくなるぞ イヒヒヒヒ」
「マサハルはすでに壊れとったんか」
呆然とする猛太の横に真中田が苦しみ始める。
「うう、うううぅぅう」
「大丈夫か真中田!?!?」
真中田に駆け寄る猛太。
「胸が、胸が痛むよ、、 うっ、うわぁーーーーーぁあああ」
叫び声を上げ、真中田のアゴから体が半分に裂けて何かが出てきた。
唖然とする猛太に【何か 】が言葉をかける。
「また会えたね 猛太」
そこには、死んだはずのレッド将軍が立っていた。
唖然とする猛太に対してマサハルが叫び声を上げる。
物語は古びた電動自転車のようにうねりを上げ加速する。
続く
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